本研究の目的は、実験移植腫瘍を用いて、放射線照射後早期にみられる乳酸濃度の低下をアポトーシスとの関連において再検討することにあり、以下の項目について実験、検討を行った。 1.放射線照射線量によるアポトーシスと乳酸濃度に変化について検討 前年度の基礎的検討で、in vivo ^1H-MRSによる乳酸濃度の測定にはRadiation induced fibrosarcoma(RIF-1)が適していることが判明し、この腫瘍系で実験を行った。In vivo ^1H-MRSによる乳酸濃度の測定では照射線量の増大に伴いブドウ糖投与前とブドウ糖投与後の腫瘍内の乳酸濃度の比は低下した。腫瘍体積倍加時間でみた抗腫瘍効果が殆ど見られない10Gyの照射でも、乳酸濃度比の低下が認められた。一方、TUNEL法によるアポトーシスの検出結果では、RIF-1腫瘍でのアポトーシスの出現頻度が細胞死全体の1%以下であり、この腫瘍系でアポトーシスの変化について評価することは非常に困難であることが判明した。 2.放射線照射後のアポトーシスと乳酸濃度の経時的変化についての検討 RIF-1腫瘍に20Gyの照射を行うと、18〜24時間後に壊死性の変化が生じ始めることがHE染色で確認された。In vivo ^1H-MRSによる乳酸濃度の測定では、照射後12時間から乳酸濃度の減少傾向がみられ、組織変化に先だって代謝の変化が生じることが示唆された。アポトーシスについては出現頻度が低く、評価できなかった。
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