研究概要 |
1,目的 ratを用いて脳内浮腫のモデルを作成し、磁気共鳴(MR)画像(自由水と高分子結合水の測定に必要な交差緩和比画像、局所水分量の測定と血液脳関門の透過性の測定に必要なT1時間画像撮像を得、組織標本と比較することで、脳内浮腫の成分や有様に差があるかどうかを調べるとともに、MR画像のコントラストにどの様に反映されるかを調べる。平成11年度はMR画像と組織学的対応を正常ratおよび中大脳動脈閉塞脳梗塞モデル(MCAO)ratを用いて行った。 2,方法 撮像は頭部の上下に平行に2個のrat固定器具で臨床用1.5T超伝導MR装置で撮像した。1.5-2.5%ハロセンで麻酔し体温低下を防いだ。左内頚動脈を縫合糸で塞栓し56時間後撮影した。撮影後Rat脳はホルマリン還流固定後摘出し、HE染色、myelin染色で脱髄の評価、fibrinogen免疫組織化学でBlood brain barrierの透過性の亢進について組織学的に検索した。 3.結果 コントロ-ルrat;MT比(%)(SD)、右27.1(1.3)左26.7(1.0),T1時間(msec)、右607.8(1.6)左615.4(2.8),水分比fw、右0.67左0.68,いずれも左右差無し(p>0.05)、MCAO rat;MT比(%)(SD)、右33.8(2.0)左28.9(1.0),T1時間(msec)、右615.5(0.9)左694.7(1.9),水分比fw、右0.68 左0.71いずれも左右差あり(p<0.01);水分比fw(water weight/total brain weight)=1/(0.921+0.341/T1時間)(1.5Tesla),PP Fatouros,et al.J.Neurosurg 90:109-115,1999による。塞栓後56時間の段階では組織学的に示されたmyelinの粗鬆化によって示される組織間隙での水分比の上昇(脳内浮腫)が著しく、この自由水の増加が血漿蛋白の漏出、すなわちBBBの破綻による蛋白結合水の増加を上回っているため、MT比としては下がる結果を招いていると考えられる。脳内浮腫の範囲は磁気共鳴(MR)画像自由水と高分子結合水の測定に必要な交差緩和比画像、局所水分量の測定と血液脳関門の透過性の測定に必要なT1時間画像撮像での陽性シグナルで評価が可能であった。
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