研究概要 |
熱中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy;BNCT)における照射内に含まれる正常細胞への障害度を調べるために、京大原子炉実験所で得られる熱中性子および熱外中性子をチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)細胞に照射しHPRT遺伝子座の突然変異発生頻度を求めた。また、ホウ素の存在下で同様の実験を行ない、ホウ素による突然変異への影響を考察した。次に、突然変異細胞のクローン細胞よりDNAをPCR法により増幅してHPRT遺伝子座の9つのExonを解析した。関連研究として、種々の癌遺伝子を導入した時の細胞の放射線感受性の変化や、温熱治療併用時の熱中性子照射増感効果を調べ、正常組織にできるだけ障害が少なく、かつ放射線抵抗性癌を効率良く治療できることを目標としている。 CHO細胞への熱中性子の致死効果はγ線に対してRBEは2-3.3と高く、HPRT遺伝子座の突然変異発生頻度はγ線と比べて2Gyで約2倍であり、ホウ素の存在下では、突然変異発生頻度は@@S110@@E1B濃度5-20ppmの範囲では、ホウ素のない時に比べ、2Gyで約1.5倍と突然変異発生頻度が増加する。熱外中性子の突然変異発生頻度は熱中性子より約2.5倍高いが、ホウ素が存在下では、突然変異発生頻度は増加しなかった。 HPRT遺伝子座9つのExonの解析では、X線やγ線と比べて有意に遺伝子全欠損型や部分欠損型のタイプが多く、点突然変異型の発現は少なかった。関連研究の成果として、癌遺伝子(mos,myc,N-ras,H-ras,K-ras)を導入した時の細胞はDNA二重鎖切断に対する修復が早いために、放射線抵抗性となること、および、熱中性子照射後に温熱を併用すると、BNCTの増感効果が得られることが判った。
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