臓器、組織におけるエネルギー産生系としての糖代謝は生体がその機能を維持するために根元的な生化学的反応であり、診断対象組織の質的診断を目的とする核医学検査において、この糖代謝機能評価は重要な診断目標である。そこで、糖代謝の重要な基質であるグルコースを母体構造として、利用の広汎性の高いSPECTによる組織糖代謝機能診断用放射性薬剤の新規開発研究を目的として、本研究を計画した。まず、これまでにインビトロでの実験系により、所期の通りヘキソキナーゼの反応に対して拮抗阻害を有する事が確認されているグルコサミン誘導体であるN-(p-iodophenethyl)-glucosamine(IBGA)について、インビボでの有用性を評価する目的で、まずヨウ素ヨウ素交換反応によりI-125標識体を得た。ついでその体内分布をマウスを用いて検討したところ、脳への移行は低いものの、心筋への高い取り込みを示した。この機序に関しては不明であるが、グルコースの代謝反応に関与した心筋の画像化の可能性が示されたものであり、非常に興味深い結果である。また、コンピューターシュミレーションによる構造活性相関の検討から、グルコースの2位に置換基を導入することの妥当性が確認されたので、インビボにおける置換基のサイズの影響を検討する目的で種々の置換基の導入が容易に行えるように、2位の水酸基をチオール基に置換したグルコース誘導体2-thioglucoseを合成した。プレリミナリーな検討として、このチオール基をC-11で標識されたヨウ化メチルを用いてメチル化し、その標識体の動物体内動態を検討した。その結果、母体化合物であるグルコースに比較してその取り込みは低いものの、集積型の時間放射能曲線が得られ、本研究によりデザインされた化合物の核医学診断薬剤としての可能性がさらに示されたものと考えられる。
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