研究概要 |
本研究の目的は,造影CTでの組織造影効果のコンパートメント解析による,病理・組織性状の定量的診断法の開発である.本年度には,初年度に作成した解析プログラムの精製・確立と,既存臨床データを用いた腫瘍病変に対するプログラム適応の可能性の検討を行った. 1.コンパートメント解析プログラムの精製・確立 解析プログラム:dM/dt=A^*F+B^*M, A=a^2/3/b^*(a^*k2+b^*k1), B=-a^2/3/b^*k2 ここで,M:心筋増加CT値,F:大血管内腔増加CT値,a:組織血管床容積率,b:間質容積率,k1:血管床→間質の造影剤移行速度,k2:間質→血管床の造影剤移行速度. 各種心疾患の17症例を対象とした超高速CTによる心筋造影効果計測データを使用し,上記プログラムを用いて,心筋血管床容積(上記a),血管床→間質の造影剤移行速度(k1),間質容積(b),間質→血管床の造影剤移行速度(k2)を算出した.その結果,正常心筋の平均値はa;8%,k1;0.077,b;36%,梗塞心筋ではa;3%,k1;0.112,b;65%となった.正常心筋の血管床サイズは報告データとよく一致した.梗塞心筋の血管床は正常に比べて小さく(p<0.05),間質は広い(p<0.001)ことが確認でき,これも推定病理像と一致した.また梗塞心筋のk1は正常より大きく,毛細血管壁の未熟性を表すと考えられた. 2.既存臨床データを用いた腫瘍病変に対するプログラム適応の可能性の検討 大阪大学病院での胸部CT画像をもとに,縦隔腫瘍の造影効果と組織性状の関連を検討した.結果,腫瘍の定量造影効果は奇形腫<胸腺腫<ホジキン病<甲状腺腫となり,推定組織構築と一致した.また造影効果に基づいて各種腫瘍が相互に鑑別でき,胸腺腫とホジキン病の分離も可能であった. 以上の成果は北米放射線学会等で発表する.また来年度は縦隔腫瘍の組織標本と計測値の対比による腫瘍病変での本プログラムの精度確認,臨床応用の拡大と,高次解析システムの開発などを計画している.
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