研究概要 |
MRIのT2強調画像で,側脳室周囲や深部白質に認められるびまん性高信号域はleuko-araiosisと呼称されるが,本研究の目的はこの病理学的背景を明らかにすることである。平成10年度は,これまで35例の剖検脳をホルマリン固定後に,MRIの撮像を施行した。その結果,うち6例においてはleuko-araiosisの所見を認めた。MRIを撮像後,剖検脳のカッティングを行い,病理標本を作成後に,Creutzfeldt-Jakob Disease(CJD)と若年性パーキンソン病の2例については剖検脳MRIと病理所見の詳細な対比を行った。1例のCJDについては,生前のMRIを含めて検討した。白質の変化が著しい全脳型CJDにおいては,leuko-araiosisは側脳室周囲深部白質から皮質下白質への進展を示した。剖検脳MRIでは,すでにほぼ白質全体に及んでいた。病理所見では,白質は皮質と共に著しい海綿状変化を示していたが,gemistocytic astrocyteやmacrophageの著しい浸潤を認めた。これらの変化は,CJDにおける白質の変化をワーラー変性とする従来の報告とは矛盾し,あくまでも一次的な変化をとらえているものと考えられた。また,MRI上ではCJDと似た白質の高信号を示した若年性パーキンソン病においても,病理学的には一次的な変化と考えられた。 一方,エコープラナー法を用いた拡散強調画像による検討では,leuko-araiosisを認めた3例に施行したがいずれも虚血性変化によるものであり,アルツハイマー型老年痴呆で認められる変性に伴うleuko-araiosisとの比較に関しては,今後の症例の蓄積を待たねばならない。
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