肺single photon emission computed tomography(SPECT)像で得られる肺機能情報を形態像であるCT像と融合させた3次元的融合像の作成を、SPECTおよびCT撮影が複雑な胸部構造をシムレーションした3次元画像胸部ファントームを作成して基礎的に検討した。ファントーム実験では、Tc-99m外部線源からのガンマ線による散乱線を利用してファントームの輪郭を描出させる方法の開発を試みた。その結果、本法により、高い精度で、CTとの3次元融合像が作成できることが証明された。研究成果は欧文雑誌に投稿した。また、本研究の過程で臨床的検討として、肺換気能核医学検査であるXe-133 SPECTを3次元画像化し、肺癌における肺局所換気能評価における有用性、肺気腫に対する肺容量減少術における有用性、さらに肺気腫例における胸郭横隔膜運動異常と肺局所換気異常との相関をみる上での有用性を検討した。その結果、本3次元画像は、肺癌例における肺換気異常部位の3次元的な把握や、肺気腫に対する肺容量減少術において肺切除部位の選択と治療効果判定に有用であることが示された。また、MRイメージにより把握される胸郭横隔膜運動異常が、Xe-133 SPECTの3次元像で評価される肺局所換気異常と密接に関連して起きることが証明された。これらの成果は欧文雑誌に投稿し掲載された。さらに、本研究の過程で、胸部CTにおいて肺気腫性病変の画像化のため、CT値が760H.U.以下の肺領域のみを抽出して表示するdensity-mask CT像を開発し、肺血流SPECTおよびXe-133 SPECTとの対比により、喫煙肺気腫では肺辺緑部の機能が肺中心部に比較して保たれる傾向にあることを見いだした。この知見も欧文雑誌に記載される予定である。本研究期間中に台風18号による水害のため核医学診療が行えなくなり、3次元的融合像の臨床的有用性をまとめるには至らなかったが、本研究過程で得られたこれらの研究成果は、今後の3次元的融合像の臨床的応用に寄与すると考えられる。
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