研究課題/領域番号 |
10670854
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
西谷 弘 徳島大学, 医学部, 教授 (50117206)
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研究分担者 |
松崎 健司 徳島大学, 医学部・附属病院, 講師 (70274222)
三好 弘一 徳島大学, 医療短期大学部, 助手 (90229906)
原田 雅史 徳島大学, 医学部・附属病院, 講師 (20228654)
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キーワード | 磁気共鳴スペクトロスコピー / 代謝物濃度 / 拡散 / 多変量解析 / 緩和時間 |
研究概要 |
臨床用MRI装置を使用し、proton MR spectroscopyにて脳内代謝物を測定し、それぞれの代謝物の濃度、拡散能及び緩和時間情報を測定した。それぞれについて多変量解析の手法を用いて検討を行い、それぞれの情報の臨床有用性について検討した。 1)正常者による代謝物濃度の年齢変化:20歳から75歳までの正常ボランティアに対して、定量化proton MRSの測定を行い、それぞれの代謝物濃度について検討した。年齢による変化を検討するために共分散分析を多変数について行うMultiple analysis of covariance(MANOVA)の手法を中心にSpermanの相関係数及び因子分析を施行した。その結果、レンズ核及び前頭葉でNAAについてのみ年齢変化の違いが認められ、レンズ核において年齢とNAA値の低下との間に相関が認められ、前頭葉では年齢とNAAとの間に有意な相関は見られなかった。これは、アルツハイマー病における前頭葉でのNAAの低下と対照的であり、加齢に伴う代謝物変化は疾患による変化と区別しうることが示唆された。 2)自閉症患児における代謝物変化:脳内各部位における年齢変化が正常者と自閉症とで異なるか検討した。年齢により正常者も自閉症もNAAの濃度の上昇が認められたが、ウエルニッケ野と頭頂葉とでNAA濃度に有意差が認められた。緩和時間は両者で有意差がなく、ほぼ同様の値であった。前頭葉や帯状回、脳幹においては有意差は認めなかった。 3)慢性脳虚血における血流と代謝物との比較:慢性脳虚血においてはNAAの代謝物濃度の加齢による変化が消失し、正常よりも低値をとることが多かった。しかし血流とは必ずしも相関せず、以前の虚血のメモリー情報をNAAは提供する可能性が考えられた。代謝物拡散能は水とほぼ同様の傾向であった。 以上のようにNAA濃度は加齢により変化するが、MRIで異常を呈しない疾患においても加齢性変化を逸脱する変化が認められ、臨床診断や病態の検討に有用と考えられた。
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