研究概要 |
1.腎における遺伝子発現法の開発 腎晩発障害の比較的早期の指標であるDNA合成促進をさらにそれに先立つ増殖関連遺伝子のmRNAレベルでの発現として捉える方法を検討した。K-ras,c-fosおよびc-mycのmRNAの発現について照射24時間後のマウスで検討した。9Gy照射例ではそれぞれ6、4、1個体が、12Gy照射例では7、4、6個体が、また、15Gy照射例では6、7、9個体が陽性であった。三者の中ではc-mycの陽性頻度が以前に検討した腎重量の低下と最もよく相関した。また、遺伝子の発現した個体がのちに腎晩発障害をきたすことの検討のため、左腎の半分と右腎の全部を照射し、24時間後に左腎を摘出して、増殖関連遺伝子測定用のサンプルとした。そして、照射した右腎のみとなったマウスの腎機能の変化をBUNの測定により長期に観察した。BUNの経時的変化を観察できたマウスは15匹で、うち11匹に腎機能の低下がみられたが、4匹の腎機能は不変であった。腎機能が低下した11匹のうち8匹でc-fosおよびo-myc遺伝子の発現がみられたが、3匹ではc-fosおよびc-myc遺伝子の発現がみられなかった。腎機能の不変であった4匹のいずれでもc-fos遺伝子の発現はみられなかったが、1匹でo-myc遺伝子の発現がみられた。以上よりc-fosおよびc-mrc遺伝子の晩発性放射線腎障害の早期指標としての可能性が示唆された。 2.小腸晩発障害の早期指標 子宮頸癌患者の放射線治療後に生ずる小腸晩発障害は、治療中に頑固な下痢の生じた例に多くみられたが、下痢と障害の程度とには相関はみられず、他の指標の開発が望まれた。腎におけると同様に、実験動物の腹部を照射し、24時間後に照射された小腸と非照射小腸を取り出し、RNAを抽出してc-myc等の有無を検討したが、これまでに傾向のあるデータは得られなかった。
|