星細胞系腫瘍の悪性度は、腫瘍血管床の大きさ、細胞密度、細胞異形性、細胞分裂や壊死の有無の程度など総合的に診断されるが、予後を決定するのは主に腫瘍血管床の大きさとされている。本年度の研究として、組織学的に証明された30例の星細胞系腫瘍に対し、腫瘍血管床の大きさを評価できるMR灌流画像を撮像し、病理学的所見と比較検討を行った。具体的には、MR灌流画像から得られる腫瘍の最大相対的血液量が、血管造影でみられる大きな腫瘍血管と病理学的レベルの小さい腫瘍血管を反映するかどうかについて検討した。更に、腫瘍の最大相対的血液量が、悪性度分類に有用かどうかについても検討した。 腫瘍の最大相対的血液量は、病理学的レベルの小さい腫瘍血管と、血管造影でみられる大きな腫瘍血管のいずれとも有意な相関関係にあった。また、膠芽腫、増強効果を伴う退形成性星細胞腫、増強効果を伴わない退形成性星細胞腫、及び良性星細胞腫の4つに分類して、最大相対的血液量を比較したところ、前2者は後2者に比較し有意に大きい値を示した。更に、膠芽腫と増強効果を伴う退形成性星細胞腫の差も大きく、最大相対的血液量が7以上の腫瘍は膠芽腫のみにみられた。 Gradient-echo法を用いたechoplanar法から得られた腫瘍の相対的血液量は、小さい腫瘍血管だけでなく、大きい血管も反映するものであり、悪性ほど血管構築が複雑になり、様々な内径の腫瘍血管で栄養される星細胞系腫瘍の血管床の評価に有用と考えられる。また、患者の予後を左右する悪性と良性の鑑別にも有用であり、星細胞腫瘍の評価方法として必須なものと考えられる。
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