平成10年度は、星細胞系腫瘍の予後を決定する因子として腫瘍血管床の大きさをMR灌流画像を用いて評価し、病理学的所見と比較検討を行った。その結果、悪性と良性の鑑別にも有用であることがわかり、星細胞腫瘍の評価方法として必須なものと考えられた。本年度は、MR拡散強調画像で得られた拡散情報との相関性について詳細に検討を行った。MR拡散強調画像は、水分子のブラウン運動の大きさを反映する方法である。つまり、細胞間質の空間は、細胞密度が大きいほど狭くなり、水分子のブラウン運動の大きさは客観的に細胞密度を反映している可能性がある。これらの仮定を基に、MR拡散強調画像から得られるグリオーマ内の水分子のブラウン運動の大きさを反映したapparent diffusion coefficient(ADC)値について評価した。また腫瘍細胞の密度は、画像解析software NIH image 1.60を使用し、細胞の核密度を病理学的な細胞密度として算出した。この両者を比較し、相関性の有無について検討した。更に、グリオーマの悪性度とADC値に相関関係があるかについても検討を行った。その結果MR拡散強調画像から得られるADC値は病理学的細胞密度と有意に相関していた。またグリオーマの悪性度分類においてもMR拡散強調画像が有用であった。MR拡散強調画像からは、病理学的な細胞密度を予測することが可能であることが示され、グリオーマの画像診断においてきわめて有用な方法と考えられた。
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