MR灌流画像、拡散強調画像は、従来のMRIとは全く違った脳内の機能的情報を提供するものとして期待されている。我々は脳腫瘍における腫瘍血管や腫瘍細胞密度など脳腫瘍の悪性、良性を決定する病理学的な情報を非侵襲的に評価する目的で、これらの手法を用い研究を行った。まず腫瘍血管床の大きさを評価するために、組織学的に証明された星細胞系腫瘍に対し、MR灌流画像の所見と病理学的所見の比較検討を行った。その結果、腫瘍の最大相対的血液量は、病理学的レベルの小さい腫瘍血管と、血管造影でみられる大きな腫瘍血管のいずれとも有意な相関関係にあった。すなわちGradient-echo法を用いたecho planar法から得られた腫瘍の相対的血液量は、大小の腫瘍血管を反映するものであり、悪性ほど血管構築が複雑になり、様々な内径の腫瘍血管で栄養される星細胞系腫瘍の血管床の評価に有用と考えられた。引き続き、MR拡散強調画像で得られる拡散情報と腫瘍組織の相関性について詳細に検討を行った。MR拡散強調画像は細胞密度を反映するという仮定の基に、MR拡散強調画像から得られるapparent diffusion coefficient(ADC)値について評価した。また細胞の核密度を病理学的な細胞密度として算出し、この両者を比較した。その結果MR拡散強調画像から得られるADC値は病理学的細胞密度と有意に相関していた。またグリオーマの悪性度分類においてもMR拡散強調画像が有用であった。MR拡散強調画像からは、病理学的な細胞密度を予測することが可能であることが示された。以上よりMR灌流画像、MR拡散強調画像は星細胞腫瘍の評価方法としてきわめて有用と考えられた。
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