目的:早期アルツハイマー病における神経細胞脱落の検出を目的に、高解像度fast short inversion-time inversion-recovery(FSTIR)画像と高解像度fast spin echo(FSE)プロトン密度画像を併用して、早期アルツハイマー病患者の海馬、嗅内皮質の磁化移動(magnetization transfer:MT)効果を計測した。 方法:早期例を含むアルツハイマー病患者と対照群を対象に、1.5-T超伝導MR装置(Signa Horizon Lx)を用い、昨年開発した高解像度FSTIR法に加え、高解像度FSEプロトン密度強調画像によるmultislice、single slice画像を撮像した。FSTIR画像における解剖学的情報をガイダンスに海馬、嗅内皮質、上側頭回、帯状回、尾状核、深部白質、脳脊髄液の磁化移動比(magnetization transfer ratio:MTR)を算出した。 結果:アルツハイマー病患者における海馬および嗅内皮質のMTRは早期例より対照群に比し有意に低下していた。上側頭回、帯状回、尾状核、深部白質、脳脊髄液のMTRは対照群と比し著変を認めなかった。各構造のMTRの左右差に関してはアルツハイマー病群と対照群の間に明らかな差異を認めなかった。 結語:FSTIR画像とFSEプロトン密度強調画像を併用することによって、海馬、嗅内皮質のMT効果を計測することに成功した。早期アルツハイマー病患者において嗅内皮質のMTRは海馬と共に低値を示し、神経細胞脱落を反映している可能性が示唆された。本法はアルツハイマー病の早期診断の一助となりうる可能性があると思われる。
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