目的:肝腫瘍の主たる治療法である経動脈塞栓術(TAE)が正常肝に及ぼす影響を、実験的にブタ肝のTAE前後に経時にサンプルを採取し、それらの抽出物からex vivo 1H-MRSを測定し、検討する研究を行ってきた。対象:生後1-2ヶ月の食用雑種豚メス10頭。体重10-20Kg.方法:1から2日間絶食後の豚を麻酔、挿管、頚静脈ライン下に開腹。実験群を3群に分けた。1群は開腹後、固有肝動脈からカテーテルと左あるいは右肝動脈に進め留置はするが、TAE前を施行しない群。2群は1群と同様にカテーテルを留置し、透視下で部位確認後、0、20、40、60、80、100、120分と経時に肝の一部を切除した群。3群はコントロール群として、開腹のみで、カテーテル留置を行わず2群と同様に経時的に肝のサンプルを採取した群。各サンプルは採取後、液体窒素にて直ちに冷却凍結。凍結した肝のサンプルの一部をperchloriacid(PCA)にて抽出し、1H-MRSを測定した。MRS装置:日本電子株式会社(JEOL)JNM-EX400(9.4T)。これまでの実験から、塞栓前の肝1H-MRSには、9.4T装置での測定結果えは3.2-3.3ppmに2から4個のピークを示すことが、判明している。これらはcholine groupと考えられた。その中のglycerophosphorylcholine(GPC)に注目すると、1.TAE後60分より、著明な減少を示した。2.コントロールとして採取した正常肝では、120分後より、緩徐な減少を示した。3.TEAは行わなかったが、カテーテルを動脈に留置した領域でも120分後に減少が明瞭となった。
|