本研究の基礎実験としてまず、健常ラットの肝臓に対する照射を行った。ラットをネンブタール麻酔下に、カテーテルを用いて肝臓に挿入し192Ir用アプリケーターと置換した。線源中心より深さ5mmの点をリファレンスポイントとし、この点に対して20Gy照射されるようにコンピューター(PLATO)にて線量分布の計算を行った。実際の照射は5分から10分で終了した。実験ラットを2群に分け各々5匹とし、1群は1ヶ月後もう1群は2ヶ月後に麻酔下にて解剖し肝臓を摘出した。肉眼的観察にて192Irにより照射された肝臓の一部は放射線壊死に陥っていることが判明した。1ヶ月群と2ヶ月群とでは有意な差は認めれなかった。線源より15mm以上離れた部位の肝臓はほとんど放射線の障害は認められなかった。以上より実験的肝癌でも192Irによる照射は実行可能と思われた。しかし定位的放射線治療装置を用いる実験では、ラットの肝臓のサイズが小さすぎること、また麻酔下でも呼吸性移動を無視できず肝臓の一部に高線量を正確に照射することは非常に困難と思われた。今後さらに本研究を遂行するには日本白色ラビットなどのより大きい動物実験モデルが必要である。また肝癌モデルもVX2腫瘍を門脈内に注入して作成するほうが実験上有利で確実かと思われ、現在計画中である。
|