腫瘍細胞は増殖能が大きいので、血管新生が追い付かず、低栄養、低酸素状態にある。そのために腫瘍は栄養、酸素等を確保する為に血管増殖因子(VEGF)を放出して栄養血管を新生する。この時、腫瘍に対して温熱治療を加えると腫瘍部血管は選択的に血管損傷が発生し、更に血管が必要となる。しかし、正常組織では神経支配によって血管拡張が発生し血流は増加し温熱障害を受け難い。本研究は腫瘍組織が栄養血管の新生をするためにVEGFを放出した周囲の血管のVEGF受容体(VEGF-R)が受け取り、血管新生を開始する時、VEGF-Rをブロックする事で腫瘍組織は血管が新生されると感じて細胞分裂を開始するが、実際には血管は腫瘍部には新生されず、分裂停止や分裂異常によって抗腫瘍効果が出現する事を調べた。人臍帯血管(Informed consentあり)およびSCC-VII腫瘍担癌C3Hマウスから血管内皮細胞を採取し、培養後、温熱刺激によって放出されるVEGF とVEGF-Rの抽出を試みた。人臍帯とマウス腫瘍血管からのVEGF抽出は困難であったが、VEGFを含む分画を抽出した。また、VEGF-Rは抽出同定は出来ませんでした。マウス大腿部皮下の5mmの腫瘍から2cm離れた皮下に1〜2μg/0.05mlのVEGF分画を投与した。処理後に腫瘍が2倍に成長する日数は無処理群は3.3日、温熱単独処理群は5.8日、温熱+VEGF併用群は7.7日となり、VEGF分画投与による新生血管の出現に関連して、温熱効果の増強が僅かに観測された。VEGF分画投与による新生血管の出現は脳梗塞、外因性壊死等の虚血疾患の治療に有効である事を示唆している。
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