この研究は、通常の抗てんかん薬による発作の抑制が困難な難治性てんかんの患者血清中に、中枢神経細胞の興奮性あるいは抑制性アミノ酸受容体チャネルに作用する物質が存在するか否かを確認することを目的とする。患者の血清を検体とし、哺乳類の単離培養神経細胞を用いて検体試料が細胞膜上の興奮性あるいは抑制性アミノ酸受容体チャネルに対する何らかの作用を有するか否かを検討する。 本年度は、前年度に引き続き、北海道大学医学部付属病院精神科神経科外来にて加療中のてんかん患者のうち、てんかん類型が明らかで各種抗てんかん薬の治療にも関わらず発作が抑制されない難治性の症例について、本研究の対象となりうる症例を選択した。その上で、明確な同意を得られた症例の一部から血液を採取し、血清成分を分離した検体を得て保存した。今後、対象症例を増やすとともに、得られた検体から限外濾過によりIgG分画を含む高分子蛋白質成分を分離・抽出する予定である。 一方で本年度は、ラット脳組織のスライス標本において、GABA_A受容体チャネル電流を計測することを目的とし、測定機器の調整と測定条件の設定についての基礎的検討を行っている。今後は患者血清より抽出された高分子蛋白質成分の存在下及び非存在下でのGABA_A受容体刺激薬に対するGABA_A受容体チャネルの反応が異なるか否かを検討する予定である。
|