研究概要 |
分裂病性思考障害に関して,客観的側面をThought Disorder Index(TDI),主観的側面をBonn Scale for the Assessment of Basic Symptoms(BSABS)を用いて検討した.TDIによる検討からは,分裂病群では「特異的言語表現」が分裂病性思考障害の特徴であり,寛解期に存在することより分裂病の脆弱性との関連が示唆された.BSABSによる検討からは,分裂病特異的な自覚的症状として,「思路の途絶」「象徴理解の障害」などの思考障害の他に「受容性言語障害」「表出性言語障害」「短期記憶障害」「知覚の細部による制縛」など要素心理学的に「言語」「記憶」「注意」に関する11項目が抽出され,これらは分裂病性思考障害と密接に関連することが考えられた.これらの成果の一部は,学術雑誌「精神医学」に掲載された.また,寛解状態にある分裂病者を対象として,TDIで評価される思考障害と事象関連電位N400(言語などの意味処理,記憶処理に関連する電位)との関連について検討したところ,N400潜時がTDI「特異的言語表現」得点と有意の正相関,N400反復効果がTDI総得点と負の相関傾向を示し,N400が思考障害の生理学的指標となりうることが明らかになった.記憶機能,実行機能に関しては,分裂病者を対象として,Wechsler Memory Scale-Revised(WMS-R),Wechsler Adult Intelligence Scale-Revised(WAIS-R),Wisconsin Card Sorting Test(WCST)を用いて検討したところ,WMS-Rの各項目はWAIS-Rの動作性知能との間に有意の相関を認め,言語性知能との間には有意の相関を認めず,また,WMS-RとWCSTとの間には有意な相関を認めなかった.この成果は第10回東北神経心理懇話会にて報告した.MRI画像を用いた脳構造体積測定に関しては現在症例数を重ねているところであり,脳構造体積と各種評価尺度,臨床変数との関連については,症例数がまとまり次第,データ解析に着手する予定である.
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