研究概要 |
cAMP response element binding protein(CREB)phosphorylation 慢性抗うつ薬paroxetine(PRX)投与後のラット大脳皮質・海馬内CREBリン酸化への影響をimmunoblotを用いて測定したところ、最終投与30分・24時間後のいずれでも有意なリン酸化亢進はみられなかった。慢性PRX投与後に急性拘束ストレス負荷を行いCREBリン酸化を測定した結果、ストレスによるリン酸化亢進がPRX前投与によって有意に抑制されていた。急性拘束ストレス(15,45,90分間)・PRX投与(急性・慢性)・慢性PRX投与+急性拘束ストレスによる大脳皮質・海馬内CREB発現の変動も合わせてimmunoblot法で測定したが、いずれの条件下でも発現の有意な変動はみられなかった。 Calcineurin expression and activity 急性拘束ストレス(45分間)のラット海馬内calcineurin(CaN)mRNA発現を、in situ hibridizationで検討した結果、GA1領域で有意な低下がみられた。 急性拘束ストレスによる大脳皮質・海馬内CaN活性(セリン/スレオニン フォスファターゼ活性)ヘの影響の検討から、ストレスによる有意な活性の亢進が明らかとなった。PRX,imipramine急性投与でも大脳皮質・海馬で1h後に有意なCaN活性の亢進が得られ、慢性投与でも同様の結果が得られた。 以上の結果は、1)転写因子CREBのリン酸化亢進がストレス刺激やPRX急性投与などの細胞外刺激によって引き起こされるが、慢性PRX投与はこれらの細胞外刺激によるCREBのリン酸化亢進を抑制する、2)急性ストレスによってCaN mRNA発現は、海馬CA1領域で低下する、3)CaN活性はストレス・抗うつ薬投与で亢進し、これは刺激による細胞内カルシウム濃度増大による効果の結果と考えられる、などが明らかになったと思われる。
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