研究概要 |
ストレス脆弱性形成に関与するcAMP response element binding protein(CREB)のリン酸化とcalcineurin(CaN)活性 ストレス脆弱ラットモデル:ラットは体重200gの雄性Sprague-Dawleyラットを用い、以下のようなsingle prolonged stress(SPS)を負荷した。SPS paradigmは、2h拘束ストレス・20min水泳ストレス・エタノール痲酔を連続して行う方法である。SPS負荷後1週間まったくハンドリングを行わない条件で飼育し、再度拘束ストレス45minを負荷してCREBリン酸化・CaN活性を計測した。対照群は、正常飼育後に拘束ストレス45min負荷を行ったラット、及び未処置(ストレス負荷がない)ラットである。 測定方法:大脳皮質前頭部・海馬のCREB,CREBリン酸化はimmunoblot法で、CaN活性はセリン/スレオニン フォスファターゼ活性を計測した。 リン酸化CREB発現の検討:sps群・急性拘束群でのリン酸化CREB発現は、未処置群に比して有意に亢進していた。SPS群・急性拘束群の間での比較では、SPS群で発現が亢進していたが、有意な差ではなかった。3群間でCREB発現には、有意な差はみられなかった。 CaN活性の検討:SPS群・急性拘束群でのリン酸化CREB発現は、未処置群に比して有意に亢進していた。SPS群・急性拘束群の間での比較では、SPS群で発現が亢進していたが、有意な差ではなかった。 以上の結果から、1)ストレス負荷によってCREBリン酸化亢進に伴うCREサイトを持つ遺伝子の発現亢進が引き起こされ、ストレス性精神障害の発症機序となる、2)ストレス脆弱性の形成にはCREBリン酸化の著明亢進に伴う遺伝子発現の障害の関与が示唆されたが、そのメカニズムにCaN活性低下によるリン酸化CREBの脱リン酸化抑制は関与していない、などが明らかになったと思われる。
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