人格のおよそ50%は親からの遺伝によると考えられている。その遺伝的背景にせまるため人格傾向に関連する遺伝子の候補を探し、遺伝子多型と人格傾向との関連を検討する。また、気分障害患者にはいくつかの特徴的な病前性格が知られているが、遺伝学的手法を用いて解析することにより、気分障害の発症予測因子あるいは発症準備因子をある程度明らかにすることも可能と思われる。 本年度は特に倫理面に配慮しながらサンプル数を増やすことを優先し、研究を遂行した。 1. 健康成人100名と寛解状態の気分障害患者82名(双極性障害28例、大うつ病性障害54例)について、人格の次元診断のためのNEO質問紙と両親の養育態度を評価するためのPBI質問紙に記入させ、採血10ccを行った。 2. セロトニントランスポーター遺伝子転写調節領域、ドーパミントランスポーター遺伝子の3'非翻訳領域、ドーパミンD4受容体、レニン・アンギオテンシン変換酵素の遺伝子多型についてPCR法を用いて判定し、患者群での頻度を検討した。 3. NEOによる5つの気質(big five)により、患者群と健康成人の気質傾向を比較した。 結果 比較的少数例ではあるが、セロトニントランスポーターについては患者群で短い塩基配列を持つ対立遺伝子(s allele)の頻度が高いことがわかった。この遺伝子多型には人種差があり、日本人は白人に比べてs alleleが多く認められた。
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