平成10-11年度にreverse transcriptase-polymerase chain reaction法を用いてストレスによるラット脳内α_1アドレナリン受容体のmRNAの変化を中心に検討した。10から240分の拘束では、視床下部において30および60分で有意に低下し、中脳においては60、120および240分で増加した。4時間/日の拘束を1から3回負荷すると、視床下部では単回ストレスで変化がみられず、反復ストレスで有意に低下した。中脳では単回ストレスで有意に増加し、反復ストレスで有意に低下した。こうした部位による所見の相違は、視床下部-下垂体-副腎皮質系の活性化によるフィードバック抑制を視床下部が受けるためかもしれない。反復ストレスによる両部位での低下は、従来の報告に見当たらず、その機序についてさらに検討が必要である。インターロイキン-6(IL-6)とIL-6受容体の遺伝子発現については、視床下部では単回ストレスでIL-6のmRNAに変化がなく、IL-6受容体のmRNAが有意に低下した。2回および3回ストレスでは両方のmRNAが有意に低下した。中脳では単回ストレスでIL-6のmRNAが有意に増加し、IL-6受容体のmRNAが有意に低下した。2回ストレスではともに変化がみられず、3回ストレスではともに有意に低下した。単回ストレスではIL-6は神経栄養因子として必要性が増すのではないかと考えられ、中脳における所見はこれを示唆している。視床下部ではIL-6は視床下部-下垂体-副腎皮質系の活性化に関与していると考えられ、そのフィードバック抑制を受けているのかもしれない。反復ストレスの所見について現在のところその明確な機序は明らかではない。ストレスによるオピオイド受容体の変化、アドレナリンおよびオピオイド受容体の各サブタイプのアゴニスト、アンタゴニストを投与することによるIL-6、IL-6受容体の変化については現在検討中で、今後学会、論文で発表していく。
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