研究概要 |
我々は、Methamphetamine(METH)の急性投与によりラットの脳内各部位におけるCaM-Kinase?活性が減少することを昨年度に報告したが、今回はD1受容体拮抗作用に差異がある抗精神病薬の前処置がMETHの急性投与によるCaM-Kinase?活性減少に影響を与えるかどうかを検討した。実験1として、溶媒、Nemonapride1mg/kgあるいはClozapine20mg/kgを投与、30分後に生食またはMETH(4mg/kg i.p.)を投与し、その3時間後に断頭した。実験2として溶媒、Risperidone3mg/kgあるいはOlanzapine10mg/kgを投与、30分後に生食またはMETH(4mg/kg i.p.)を投与し、その3時間後に断頭した。CaM-Kinase?活性は実験1、2を通じて大脳皮質、線条体、側坐核でMETHの急性投与から3時間後で有意に減少した。Clozapineは大脳皮質と側坐核で、Olanazapineは大脳皮質に於いてMETHによるCaM-Kinase?活性減少を阻止した。D1受容体拮抗作用がないNemonapride,Risperidoneにはこの阻止効果がなかった。 抗精神病薬によるCaM-Kinase?活性への影響については報告は乏しいが、Haloperidolの慢性投与により線条体で活性増加を認めたという報告がある。 CaM-Kinase?は記憶、学習に重要な役割を果たしているとされるが、METH急性投与によるCaM-Kinase?活性減少を阻止したClozapine,Olanzapineには精神分裂病の認知障害を改善する作用が報告されている。これらの非定型抗精神病薬の慢性投与によって脳内CaM-Kinase?活性に影響がおよぶかどうかに興味が持たれるが、これは今後の検討課題としたい。
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