研究概要 |
平成10年度はラットシグマ受容体タイプ1のcDNAのサブクローニングを目標とした。シグマ受容体タイプ1は1996年にがヒトとguinea pigでcDNAクローニングされているので、まず、GenBankより核酸配列とアミノ酸配列を読み出し、両者のアミノ酸配列の相同性を検索し、アミノ酸レベルで保存されている30-37番と166-173番のアミノ酸配列部分に対応する変性プライマーを設計した。 ラット脳を取りだし、シグマ受容体の比較的多い海馬を切出し、これをホモジネートし、メッセンジャーRNAをグアニジン法で抽出し、これを材料としてpoly-dTをプライマーとして逆転写酵素によりcDNAを合成した。先の変性プライマーをもちいて、ラット海馬cDNAおよびクロンテック社のPCR用ラットcDNAライブラリーをテンプレートとして、アニーリング温度を50℃でPCR増幅した。PCR産物を2%アガロースゲルで分離したところ、400bp,780bp,1100bpの3本のバンドがどちらのテンプレートからも得られた。この3本のバンドをそれぞれ切り出し、精製し、TAクローニング用プラスミッドに組み込み、コンピタントセル(大腸菌)にトランスフェクトし、LBアガー培地で増殖させ、陽性のコロニーを拾った。これを種子として、更に液体培地(LBブロース)で増殖し、そこから目的のPCR断片が組込まれたプラスミッドを抽出した。これをシークエンスにて塩基配列を決めた。 この配列をヒトとguinea pigのシグマ受容体タイプ1のcDNA配列を比較したところ、400bpのバンドのものがそれぞれ90%と87%の相同性が確認され、ラットシグマ受容体タイプ1のcDNAと考えられた。他のものは既知のDNAと全く相同性がなかった。
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