ラットにmethamphetamine4mg/Kgを一日1回、14日間連続で腹腔内に投与し、精神病モデルラットを作成した。対象には同量の生食を投与した。最終投与から3時間、24時間、7日21日後に断頭した。昨年の経験からシグマ受容体タイプ1のin situ hybridizationには翻訳領域の300bpのアンチセンスcRNAを用い、SP6ポリメラーゼで35S標識したものを用いた、しかし、やはりラット脳ではシグナルを検出できなかった。一方、Na+非存在バッファーと[3H]YM09151-2を用いることでシグマ受容体タイプ1/2を高感度で検出できることを見出したので、これを用いたautoradiographyを行った。その結果、精神病モデルラットでは内側前頭前野、海馬、黒質、小脳での結合が増加していた。このうち、前頭前野と海馬の増加はmethamphetamine投与を中止21日後でも持続してみられ、精神病性変化に対応するものと考えられた。 一方、人での精神病への関わりを検討するために、覚せい剤精神病患者104名と年齢・性別の一致した正常対象者117名において、ヒトシグマ受容体タイプ1遺伝子の2つの多型(プロモーター領域のGC-241-240TTと、exon1のGln2Pro)を検討した。その結果、プロモーター領域多型の遺伝子頻度は正常者でGC/GC45.3%、GC/TT45.3%、TT/TT9.4%で覚せい剤精神病患者がそれぞれ47.1%、43.3%、9.6%、アレル頻度は正常者でGCアレル67.9%、TTアレル32.1%で、覚せい剤精神病患者はそれぞれ68.8%、31.3%であった。exon1のGln2Pro多型はプロモーター領域多型と完全連鎖していることが明らかになり、遺伝子頻度、アレル頻度は同じであった。両群には有意差は認められなかった。
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