研究概要 |
我々は,種々のてんかんモデルにおいて脳内ポリアミン代謝が亢進し,特にプトレッシン濃度が上昇することを明らかにしている。また,このプトレッシンが抑制性脳内物質である可能性も報告している。本研究では,てんかん活動によるストレスの他に,長時間の拘束ストレスを負荷し,脳内ポリアミンとGABA濃度に及ぼす影響を検討した。 (1) カイニン酸誘発てんかんによる脳内ポリアミンとGABA濃度変化 マウスにカイニン酸を投与し(50mg/kg,s.c.),てんかん活動を誘発した後,海馬,前頭皮質のポリアミンとGABA濃度を定量した。一部のマウスには,ポリアミン酸化酵素阻害剤であるMDL72527を前処理し,アセチルポリアミンを蓄積させることでポリアミン相互転化反応の活性を検討した。その結果,両脳部位でカイニン酸誘導てんかんによるポリアミン合成反応と相互転化反応の活性化が観察され,プトレッシンの増加が見られた。また,プトレッシンからGABAが合成される経路も活性化されていることが示唆された。 (2) 拘束ストレスによる脳内ポリアミンとGABA濃度変化 マウスをストレスゲージに2時間拘束した後,海馬,前頭皮質のポリアミンとGABA濃度を定量した。一部のマウスには抗不安薬であるジアゼパム(2or5mg/kg,i.p.)を前処理した。その結果,拘束ストレスによって海馬のプトレッシンが負荷解放直後から6時間後にかけて増加し,スペルミジン,スペルミンは24時間後に減少した。前頭皮質でのポリアミン変化は見られなかった。また,両脳部位でGABAの増加が観察された。ジアゼパムの前処理により,ポリアミン濃度変化は影響を受けなかったが,GABAの増加は抑制された。 今後,特に(2)のテーマを中心に研究を進める予定である。特に,ストレスによる脳内ポリアミンの変化を抑制するような薬物を探し,ポリアミン増加の意味を明らかにしたい。また,ストレス負荷後の血中ポリアミンを定量し,ストレス指標としての可能性を追求する予定である。
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