研究概要 |
本年度は以下の2項目について検討した。 1.拘束-浸水ストレスによる脳内および血漿中のプトレッシの濃度変化 拘束-浸水ストレスを2時間負荷したマウスの脳を摘出し,前頭皮質,海馬,視床下部および血漿中のプトレッシン濃度を定量した。一部のマウスには,抗不安薬であるジアゼパム(5mg/kg,i.p.)をストレス負荷の30分前に投与した。その結果,拘束-浸水ストレスを負荷したマウスでは,ストレス解放から24時間後に全ての脳部位でプトレッシン濃度の増加がみられた。この増加は48時間後にはコントロールレベルに戻った。また,ジアゼパムを前処理するとプトレッシンの増加は抑制された。血漿中のプトレッシン濃度変化はみられなかった。以上より,脳内ポリアミン代謝が心理的ストレスの影響を受けることが示された。 2.カイニン酸投与によるストレスとポリアミン相互転化反応の関連 ラットにカイニン酸を投与すると激しいけいれんとともに神経細胞死が誘導される。この細胞死はCa2+/カルモデュリン依存性フォスファターゼ(カルシニューリン)阻害剤であるFK506やシクロスポリンAで抑制される。一方,カイニン酸けいれんでは脳内ポリアミン代謝が活性化され,特にポリアミン相互転化反応から産生される活性酸素が神経細胞死に関与している可能性が示唆されている。そこで本研究では,FK506を前処理した後,カイニン酸けいれんを誘発し,ポリアミン相互転化反応の活性を検討した。その結果,FK506の投与の如何に関わらず,同程度のポリアミン相互転化反応の活性化が観察された。この結果は,ポリアミン相互転化反応から産生される活性酸素が,カイニン酸による神経細胞死の第一の要因ではないことを示唆している。
|