研究概要 |
アルコールの中枢神経系(海馬)発達過程に及ぼす影響を組織定量的に検索を行った。生後(postnatal day:PND)10から15日齢の期間、ラットに1日3時間、アルコール蒸気暴露を行い(血中濃度430mg/dl)PND16あるいはPND30日に動物を潅流固定し海馬領域の組織定量を実施した。観察を行った部位はCA1(regio superior)、CA2+CA3(regio inferior),hilus,granule cell layerの4箇所である。 PND16ではhilusでニューロン密度に変化は見られなかったが、体積が有意に減少していた。他の3領域では密度、体積、ニューロン総数に有意な変化は見られなかった。しかしながら、PND30ではhilusの体積に有意な差がなくなった。また、実験群・コントロール群でgranule cell layerのニューロン数が増加した。以上のことからhilus領域ではmossy cellやfusiformのaxonやdendriteあるいはgranule cellのaxon等の発現(arborization,branchingを含む)がアルコールにより遅らされたと考えられる。この発達遅延はPND30までにはなくなっているので、この実験でのアルコール暴露の時期と血中濃度では回復しているため一時的なものであったと推測できる。また、granule cellのneurogenesisは生後であるので今回の実験ではgranule cellのproliferationには影響がなかったことになる。神経細胞の回復可能な状態の情報は催奇形性の感受期とアルコール暴露量に関して非常に重要なものと考えられる。神経細胞の組織定量はすでに小脳のプルキンエ細胞でも行っており、この領域に関する論文を掲載した。
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