研究課題/領域番号 |
10670904
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研究機関 | 香川医科大学 |
研究代表者 |
竹内 義喜 香川医科大学, 医学部, 教授 (20116619)
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研究分担者 |
岩橋 和彦 麻布大学, 環境保健学部, 教授 (00232695)
中村 和彦 麻布大学, 獣医学部, 講師 (80263911)
三木 崇範 香川医科大学, 医学部, 助教授 (30274294)
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キーワード | 胎児性アルコール症候群 / 海馬錐体細胞 / 学習・行動解析 / 遅発性神経細胞死 / 細胞障害メカニズム |
研究概要 |
申請者らは、新生仔期の環境有害因子(放射線、アルコール等)曝露が中枢神経系の神経細胞に与える影響についての研究を行ってきた。特に、アルコール曝露モデルは、ヒト胎児性アルコール症候群の実験動物モデルに相当し、このモデル動物作成法の確立に成功した。これまで、小脳、海馬、視交叉上核に及ぼすアルコールの影響について報告してきた。昨年度は海馬歯状回門領域の神経細胞が他の領域の神経細胞に比較してアルコールに対する感受性が高いことを組織定量学的解析から明らかにした。この結果に基づき、本年度は、海馬の機能と関わりのある、記憶、学習行動について解析を行った。 10-15日齢間の新生仔ラットにアルコール蒸気を3時間/日、6日間連続曝露することによりモデル動物を作成した。平均血中濃度は、約430mg/dLであった。アルコール曝露動物では、8方向迷路による空間認知を主とする行動学習において、コントロール群に比べて有意に低い学習成績を示すことが明らかになった。これは、アルコールにより、海馬神経細胞に遅発性神経細胞死を惹起したためと仮説をたてた。しかしながら、定量的組織解析により、海馬CA1領域錐体細胞総数は曝露直後(16日齢)においても30日齢においてもコントロール群に比べて有意な差を示さないことが置きらかになった。海馬のCA1領域錐体細胞は脳虚血により、遅発性の神経細胞死が起こることは良く知られた事実である。これらの事実は、海馬錐体細胞は、10-15日齢間のアルコール曝露に抵抗性を示し、脳虚血の際に見られるような遅発性神経細胞死を惹起しないことが明らかになった。即ちアルコール曝露と虚血は、神経細胞障害メカニズムが異なることを示唆するものである。
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