研究概要 |
精神疾患罹患の素因が等しいと考えられる一卵性双生児の精神分裂病発症不一致例,及び精神分裂病患者,健常対照者を対象に,外的要因であるウイルス感染の既往の有無が分裂病罹患のリスクを高めるか否かを検討するため,分裂病との関わりが国内外で幾つか報告されているボルナ病ウィルス(BDV)及び一卵性双生児精神分裂病不一致例の患者に高率であったと予報的に報告されたペスティウィルスへの感染既往の有無を調べ,精神分裂病罹患との関連を検討した。 長崎大学医学部倫理委員会において承認を得たのち,対象者に研究の趣旨,方法について説明し,文書による同意を得た上で採血を行い,血清および全血RNAを得た。今回集まった対象は精神分裂病患者24人,健常成人45人(一卵性双生児精神分裂病不一致例3組,一卵性双生児精神分裂病一致例1組,一卵性双生児健常対照3組,二卵性双生児健常対照1組を含む)であった。BDV及びペスティウィルスへの感染既往の有無を調べる方法として,ウェスタンブロット法による抗BDV抗体の検出及び,RT-PCR法による両ウィルスRNAの検出を行った。その結果,BDV RNA陽性3例(精神分裂病患者1例4.2%,健常対照者2例4.4%),ペスティウィルスRNA陽性1例(精神分裂病患者0例,健常対照者1例2.2%)であり,陽性例はいずれも非双生児であった。抗BDV抗体陽性例は検出できなかった。今後さらに症例を増やして検討する予定である。
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