研究概要 |
分裂病型人格障害は精神分裂病近縁疾患の一つと考えられ、精神分裂病と何らかの共通の生物学的基盤を有すると考えられている。我々は琉球大学の1493人の新入生にGeneral Health Questionnaire(GHQ)、Schizotypal Personality Questionnaire(SPQ)、Structured Clinical Interview for DSM-III-R(SCID)を施行した。これらの検査で高得点を示したものを分裂病型人格障害とし、同意の得られた7名と性年令を対応させた健常者から聴覚odd-ball課題を用い、事象関連電位測定を行った。その結果、N100,P200,N200は振幅、潜時とも群間の差を認めず、P300潜時についても差を認めなかった。P300振幅は分裂病型人格障害群で健常者群に比して低下を認めた。以上の結果は分裂病型人格障害における精神分裂病と類似の認知機能障害の存在、およびP300振幅の潜在的な精神分裂病リスクマーカーとしての有用性を示していると考えられた。 更に近赤外線分光法(f-NIRS:functional-Near Infrared Spectroscopy)を用いWisconsin Card Sorting Test施行中の精神分裂病者と健常者の前頭葉の脳血流変化を測定し検討した。対象は10人の健常者(平均年齢28±4歳)と10人の精神分裂病者(平均年齢34.5±9歳)であった。被験者は全員男性で右利きであった。精神分裂病者の下位分類(DSM-IV)はそれぞれ妄想型6名、分類不能型3名解体型1名であった。血流の反応パターンについて、I型:血流変化の反応性が良い。II型:反応性が緩徐。III型:血流が減少。IV型:反応がないの計4型に分類した。更に、左右差についても左側型、右側型、両側型の分類を加えた。その結果健常者ではI型が4人と最も多く、精神分裂病者ではIV型が4人、II型が3人で精神分裂病者では全体に血流変化の反応性に乏しかった。現在、分裂病型人格障害においても同様な所見が得られないか検討中である。
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