精神分裂病の神経発達障害仮説の神経生物学的な基礎を明らかにするために、われわれは、ラットの新生児期に精神分裂病発症のrisk factorと考えられている中枢刺激性薬物・身体的ストレス・低栄養などを負荷するという精神分裂病の動物モデルを作成することを試みた。 今年度は中枢ドーパミン系の発育に関与していると考えられているドーパミンD1受容体と、新生児期のシナプス形成に関与している一酸化窒素(NO)に注目した。それぞれドパミンDl受容体のアンタゴニストであるSCH23390およびNO合成酵素(NOS)の阻害薬であるN-nitro-arginine methyl ester(NAME)を生後2日目から2週間投与した。生後35日目に、methamphetamineを投与し、引き起こされる行動量の増加や常同行動を指標として、ドーパミン系の感受性に変化があるかを検討した。 その結果、新生児期のSCH23390投与によっては、成熟期のラットのドーパミン感受性には変化がなかったが、NAME投与によって成熟期でのラットのドーパミン感受性が低下していることがわかった。 以上の結果から、新生児期の神経発達を阻害する薬物の投与によって、成熟期でのドーパミン感受性に影響を与えることができることがわかった。さらに、精神分裂病で想定されているドーパミンの過感受性を引き起こすような新生児期での処置を試みている。
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