がん患者への精神科的介入として、どこの施設で誰が行っても一定以上の効果が得られるようなマニュアルを作成した。これは、毎回90分で毎週1回で計5回行うものである。この構成要素は、その構成要素は、(1)心理社会的教育、(2)問題解決技法、(3)支持的精神療法、(4)リラクセーション、(5)イメージ療法などである。 乳がん患者47名に対して、文書による同意書を得た後に「構造化された介入」を施行した。化学療法施行令を除外して、残る40名について介入前後のPOMS(Profile of Mood States)を比較すると、抑うつ・活気の無さ・疲労・混乱(いずれもp<0.05)、および緊張・情緒不安定(いずれもp<0.01)などほとんどすべての項目で有意な改善がみられた。 次に、乳がん患者に対して「構造化された介入」を施行し、前後でナチュラルキラー細胞活性を測定した。この際、リンパ節転移のある場合には化学療法を施行する可能性が高いため除外し、転移がなくとも化学療法を施行した場合は除外した。化学療法は免疫機能に影響を与えるからである。また、温存療法で放射線療法を施行した場合も、同じ理由で除外したため、対象は32名であった。結果的には、介入前後でのNK細胞活性(lytic units/10^7 cells)の平均は介入前は14.64±9.90、介入後は14.89±11.70であり有意差は認められなかった。 このような「構造化された介入」によって、情緒状態に改善はみられたが、免疫機能に有意な増強はみられなかったことになる。その理由としては、対象数が少なかったこと以外に、介入が手術後2-3週間くらいで始まったために、介入前のNK細胞活性値が不安定だったのではないかと推察される。今後は、介入を手術後一定期間を経過してから開始するなど研究デザインを修正し、症例数も増やして検討していきたい。
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