研究概要 |
老化に伴い早期に痴呆を呈するアルツハイマー病の,老化現象とその制御を解明する為の研究をヒトで行うのは不可能で,モデル動物の確立が切望されている。APP遺伝子導入等によるトランスジェニックマウスの作製が試みられているが,今の所満足するモデルは得られていない。ヒトアルツハイマー病で認められる神経原線維変化(NFT)は,ヒトではダウン症やニーマンピック病C型のモデルマウスを用いて,このマウスがアルツハイマー病のモデル動物となるか否かに関して,形態学的に検討して以下の結果を得た。l)ガリウス染色等による光顕像ではNFT様に見える所見を認めたが,ヒトアルツハイマー病に見られる程の典型像は示さなかった。2)しかし,ヒトアルツハイマー病脳から抽出,精製されたリン酸化tau(phf-tau)に対する抗体を用いて,免疫組織化学的に検討した所,陽性を示す細胞が検出された。3)電顕的には大脳皮質に所謂paired hellical filamentが検出された。このマウスの寿命は14週齢であり,早期に死亡する為,アルツハイマー病としての病理所見が充分には出揃ってない時期に相当している。しかし形態学的な研究結果,特に2),3)の所見は,このニーマンピック病C型のマウスが,ヒトアルツハイマー病のモデル動物の有望な一候補であると考えられた。現在C型のネコ動物モデルについても,同様の検討を加えており,アルツハイマー型のNFTの所見がニーマンピック病C型に共通の所見か否かについても検討する。
|