研究課題
DSM-IVに従って診断を下した気分障害のうち大うつ病患者において、性格類型の検査項目であるTCIを指標とすると、うつ病の重症度は、損害回避(Harm Avoidance)スコアーと正の相関をし、自己志向性(Self-Directedness)と協調(Cooperativeness)のスコアーと負の相関を示した。さらに抗うつ薬治療により、これらのTCIの所見は、治療反応群では、正常者の所見に近づいたが、治療非反応群では変化しないという特徴を示した。一方、PBIで検討した養育体験に関しては、うつ病患者およびOCD患者はともに両親の低いケア、及び母親の高いプロテクションがみられた。また、アトピー性皮膚炎の患者では抑うつ傾向がみられ、健常者との比較で、PBIでは特に差異が見られなかったが、TCIにおいて損害回避が高い傾向がみられた。これらの所見を得た患者から同意を得たものからは、採血によってDNAを抽出しており、今後、抗うつ薬反応性を中心とした臨床所見と、遺伝子多型との関連を進め、薬物反応性の指標を得ること、ひいては新規抗うつ薬の開発に繋がる所見を得ることを目標として一層研究を継続していく所存である。さらに、うつ病の早期発見のためのtoolを検討すること。身体疾患を併発する患者や、勤労者におけるうつ病の疫学的データを完備し、頻度と環境要因の検討を行うこと。抗うつ薬以外のうつ病治療法として認知行動療法の有効性の検証。などの研究を今後も継続していく所存である。
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