ラットに脳波及び筋電図用電極を植え込む手術を行い、無拘束状態でポリグラフ記録が出来るようにした。これによりラットの自然な睡眠・覚醒リズムを連続記録した。 覚醒は脳波の脱同期化と筋電図活動の存在によって判定した。睡眠は徐波睡眠と逆説睡眠に分けられるが、徐波睡眠は脳波に紡錘波の見える軽睡眠と、紡錘波が消失しデルタ波のみになった深睡眠に分けて判定し、逆説睡眠はシータ波と筋活動の消失によって判定した。ラットは明期に睡眠を多くとり、暗期に多く覚醒する傾向があるが、どちらにも覚醒-徐波睡眠-逆説睡眠のウルトラディアン周期が認められた。 一時間のfootshock stressにより、その直後一から二時間覚醒が続くが、その後約半日も睡眠、特に深睡眠と逆説睡眠が増加(過眠)した。その後半日は逆に覚醒が増加(過覚醒)するという三相性の変化がおこることが認められた。footshockの時間帯を変えても同様な傾向は認められるが、どちらかというと明期に刺激した時の効果の方が大きかった。 これまでの予備的研究でfootshockの翌日、レボメプロマジンの睡眠誘発動果が抑制されるという現象を見出していたが、それは自然睡眠の上ではこのような急性ストレス後翌日の過覚醒相における生理学的変化を反映したものであることが分かった。 これまでの予備実験ではまた、footshockの直前にクローニジンを投与し、ストレス中に中枢ノルアドレナリン・ニューロンの過剰活動を抑えると翌日のレボメプロマジンの睡眠誘発効果への耐性がおこらぬという所見を得ているが、これはストレス後の過覚醒がノルアドレナリン系の過剰活動への適応であるという仮説を指示するものである。
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