1998 年度実績報告書

精神分裂病における神経情報処理障害の原因となる遺伝子異常の探索.

研究課題

研究課題/領域番号	10670929
研究機関	国立精神・神経センター
研究代表者	西川徹国立精神・神経センター, 神経研究所・疾病研究第三部, 部長 (00198441)
研究分担者	梶井靖国立精神, 神経センター・神経研究所・疾病研究第三部, 研究員 (40291942)
キーワード	精神分裂病(分裂病) / Methanphetamine / Phencyclidine / differential cloning / 大脳新皮質 / 陽性症状 / 陰性症状 / 生後発達
研究概要	精神分裂病(分裂病)は思春期以降に発症するが、種々の分裂病様症状発現薬も小児期には精神病状態を引き起こし難い。また、分裂病様症状発現薬のうち、amphetamine、methamphetamine(MAP)、cocaineなとは、主に分裂病治療薬(抗精神病薬)が奏功する陽性症状様の異常を生じさせるのに対して、phencyclidine(PCP)やketamineなどのNMDA型グルタミン酸受容体遮断薬は陽性症状とともに、抗精神病薬に抵抗する陰性症状と類似の症状を誘発する。これらの所見は、陽性症状や陰性症状に関係する脳の情報処理系が、思春期以降に成熟することを示唆している。実験動物においても、分裂病様症状発現薬による行動および脳の神経活動の異常が、一定の発達段階から、分裂病のモデルと考えられている成熟期のパターンに移行する。そこで本研究では、分裂病における神経情報処理障害の分子機構の手かがりを得るため、ラット脳において、MAPまたはPCPに対する反応性が生後発達に伴って変化する遺伝子群を、differential cloning法および定量的RT-PCR法を用いて検索した。 MAPあるいはPCPによる発現誘導が、生後8日には見られないが生後50日には著明になる遺伝子転写産物が大脳新皮質よりそれぞれ3および2種類見出された。MAPに発達依存的応答を示す遺伝子転写産物は、すべて従来報告されていない塩基配列をもつことがわかった。このうち1種についてはcDNAの全塩基配列を決定し、cocaineにも応答するがDlドーパミン受容体遮断薬投与では無変化であることなどから陽性症状との関連が推測された。一方、PCPに発達依存的な応答を示す遺伝子の一つの全長を解析し、synapse-associated proteinsの一種であることや、MAPやcocaineでは成熟期にも発現誘導されないことなどがわがり、シナプス伝達ならびに抗精神病薬抵抗性症状の原因となる情報処理障害に関係する可能性が示唆された。現在、脳新皮質以外の脳部位でdifferential cloning法による探索を継続するとともに、上記遺伝子群の局在、機能、ヒト相同遺伝子等について検討中である。

研究成果

(12件)

すべてその他

すべて文献書誌 (12件)

[文献書誌] Umino A,et al.: "Characterization of phencyclidine-induced increase in prefrontal cortical dopmaine metabolism in the rat." Br J Pharmacol. 124. 377-385 (1998)
[文献書誌] Hashimoto T,et al.: "Psychotomimetic-induction of tissue plasminogen activator mRNA in the cortico-striatal neurons.in the rat" Eur J.Neurosci. 10. 3387-3399 (1998)
[文献書誌] Saigoh K,et al.: "The stereospecific effect of D-serine ethylester and D-cycloserine in ataxic mutant mice" Brain Res. 808. 42-47 (1998)
[文献書誌] Haradahira T,et al.: "Synthesis and brain distribution of carbon-11 labeled analogs of antagonists for the NMDA receptor coupled PCP-binding site" J Labelled Cpd Radiopharm. XLl. 843-858 (1998)
[文献書誌] Sasaki S,et al.: "Excellent acceleration of Diels-Alder reaction by microwave irradiation for the synthesis of new fluorine-substituted ligands of NMDA receptor" Bioorganic & Medical Chemistry Letters. 8. 2983-2986 (1998)
[文献書誌] 西川徹: "抗精神病薬抵抗性分裂病症状の分子機構へのアプローチ特集『情動・意欲の神経機構とその病態』" 脳の科学. 20. 781-788 (1998)
[文献書誌] 西川徹: "内因性精神病特集『症候・病態の分子メカニズム』" Molecular Medicine. 35. 569-570 (1998)
[文献書誌] 久住一郎、小山司、西川徹: "分子変異から生ずるてんかん特集『知能・行動・こころを左右する遺伝子』" Molecular Medicine. 35. 1452-1461 (1998)
[文献書誌] 海野麻未、西川徹: "c-Fos蛋白" 臨床精神医学. 27. 1303-1305 (1998)
[文献書誌] 黒田安計、西川徹: "精神分裂病の生物学専門医のための精神医学レビュー'98-最新主要文献と解説-(風祭元監修)" 総合医学社, 13-19 (1998)
[文献書誌] 黒田安計、濱村貴史、西川徹: "抗精神病薬の作用機序「精神分裂病と気分障害の治療手順-薬物療法のアルゴリズム-」(佐藤光源、樋口輝彦編)" 星和書店, 141-155 (1998)
[文献書誌] 山本直樹、西川徹: "dフェンサイクリジン12他の薬物依存と脳障害臨床精神医学講座第8巻薬物・アルコール関連障害" 中山書店(印刷中),

1998 年度 実績報告書

精神分裂病における神経情報処理障害の原因となる遺伝子異常の探索.

研究代表者

西川 徹 国立精神・神経センター, 神経研究所・疾病研究第三部, 部長 (00198441)

研究成果

[文献書誌] Umino A,et al.: "Characterization of phencyclidine-induced increase in prefrontal cortical dopmaine metabolism in the rat." Br J Pharmacol. 124. 377-385 (1998)

[文献書誌] Hashimoto T,et al.: "Psychotomimetic-induction of tissue plasminogen activator mRNA in the cortico-striatal neurons.in the rat" Eur J.Neurosci. 10. 3387-3399 (1998)

[文献書誌] Saigoh K,et al.: "The stereospecific effect of D-serine ethylester and D-cycloserine in ataxic mutant mice" Brain Res. 808. 42-47 (1998)

[文献書誌] Haradahira T,et al.: "Synthesis and brain distribution of carbon-11 labeled analogs of antagonists for the NMDA receptor coupled PCP-binding site" J Labelled Cpd Radiopharm. XLl. 843-858 (1998)

[文献書誌] Sasaki S,et al.: "Excellent acceleration of Diels-Alder reaction by microwave irradiation for the synthesis of new fluorine-substituted ligands of NMDA receptor" Bioorganic & Medical Chemistry Letters. 8. 2983-2986 (1998)

[文献書誌] 西川 徹: "抗精神病薬抵抗性分裂病症状の分子機構へのアプローチ 特集『情動・意欲の神経機構とその病態』" 脳の科学. 20. 781-788 (1998)

[文献書誌] 西川 徹: "内因性精神病 特集『症候・病態の分子メカニズム』" Molecular Medicine. 35. 569-570 (1998)

[文献書誌] 久住一郎、小山 司、西川 徹: "分子変異から生ずるてんかん 特集『知能・行動・こころを左右する遺伝子』" Molecular Medicine. 35. 1452-1461 (1998)

[文献書誌] 海野麻未、西川 徹: "c-Fos蛋白" 臨床精神医学. 27. 1303-1305 (1998)

[文献書誌] 黒田安計、西川 徹: "精神分裂病の生物学 専門医のための精神医学レビュー'98-最新主要文献と解説-(風祭 元監修)" 総合医学社, 13-19 (1998)

[文献書誌] 黒田安計、濱村貴史、西川 徹: "抗精神病薬の作用機序 「精神分裂病と気分障害の治療手順-薬物療法のアルゴリズム-」(佐藤光源、樋口輝彦編)" 星和書店, 141-155 (1998)

[文献書誌] 山本直樹、西川 徹: "dフェンサイクリジン12他の薬物依存と脳障害 臨床精神医学講座 第8巻 薬物・アルコール関連障害" 中山書店(印刷中),

1998 年度実績報告書

西川徹国立精神・神経センター, 神経研究所・疾病研究第三部, 部長 (00198441)

[文献書誌] 西川徹: "抗精神病薬抵抗性分裂病症状の分子機構へのアプローチ特集『情動・意欲の神経機構とその病態』" 脳の科学. 20. 781-788 (1998)

[文献書誌] 西川徹: "内因性精神病特集『症候・病態の分子メカニズム』" Molecular Medicine. 35. 569-570 (1998)

[文献書誌] 久住一郎、小山司、西川徹: "分子変異から生ずるてんかん特集『知能・行動・こころを左右する遺伝子』" Molecular Medicine. 35. 1452-1461 (1998)

[文献書誌] 海野麻未、西川徹: "c-Fos蛋白" 臨床精神医学. 27. 1303-1305 (1998)

[文献書誌] 黒田安計、西川徹: "精神分裂病の生物学専門医のための精神医学レビュー'98-最新主要文献と解説-(風祭元監修)" 総合医学社, 13-19 (1998)

[文献書誌] 黒田安計、濱村貴史、西川徹: "抗精神病薬の作用機序「精神分裂病と気分障害の治療手順-薬物療法のアルゴリズム-」(佐藤光源、樋口輝彦編)" 星和書店, 141-155 (1998)

[文献書誌] 山本直樹、西川徹: "dフェンサイクリジン12他の薬物依存と脳障害臨床精神医学講座第8巻薬物・アルコール関連障害" 中山書店(印刷中),