研究概要 |
Bリンパ球の産生する活性酸素が抗体産生過程で何らかの役割を果たしているのではないかと考えている。このことを調べるために活性酸素の産生できない慢性肉芽腫症(Chronic granulomatous Disease:CGD)患者のBリンパ球と正常人のBリンパ球の活性を比較する目的で両Bリンパ球をEB virusを用いて不死化し、EB virus transformed cell line(EBV-BCL)を得た。しかし株化された細胞はselection(選択)がかかっている可能性があること、また株化に用いた細胞の提供者である患者は既にサイトカイン等を用いた種々の治療を受けており、その影響を除去することが出来ない。 X染色体性(gp91欠損)CGDマウスをDinauerらがknockout mouseを作成することにより得ており(Nature Genetics,9,202,1995)、それを入手できたので、まずこのマウスを用いて当初計画したProcessing、抗原提示能について調べることにした。即ち、正常及びCGDマウスのspleenから、B cell rich fractionを得、マイトマイシン処理後、抗原としてrat IgG anti-mouse IgMを加える。B細胞はsurface IgMを介してrat IgG anti-mouse IgMを取り込み、processing後、抗原提示すると考えられる。これにrat IgGで免疫したマウスの大腿部リンパ節より分離精製したTリンパ球を加える。培養後、Tリンパ球の増殖を3H-thimidineの取り込みでみた。その結果、正常マウスのBリンパ球を用いてもCGDマウスのBリンパ球を用いても3H-thimidineの取り込みに差はみられなかった。即ちCGDマウスのBリンパ球のprocessingも、抗原提示も正常と考えられるので、B細胞が産生する活性酸素がそれらの過程で積極的な役割を果たしているとは考えにくいことが判明。
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