研究概要 |
すでに平成10年度に我々が確立したHPLC法とRIA法を併用した細胞内ara-C活性型代謝物であるara-CTP微量定量法を用い、大量療法でなくara-Cの少量あるいは通常量を投与した白血病患者多数例の解析(20症例)としては、世界で初めて、臨床検体での細胞内ara-CTP濃度を経時的に測定した。さらに細胞内濃度時間曲線下面積(AUC)を含む薬物動態パラメータを算出し、同時に採取・測定した血漿中ara-C濃度のAUCとの比較検討を行った。あわせてara-Cの皮下注,持続点滴静注,2時間点滴静注,ara-Cの徐放剤であるN^4-behenoyl-ara-Cの2時間点滴静注などの投与法ごとの比較検討も行った。その結果、細胞内ara-CTPの半減期は血漿中ara-Cの半減期とよく相関し、血漿中ara-C濃度を長時間維持することが細胞内ara-CTPの増加、ひいては抗腫瘍効果の増強につながることが示唆された。投与法別ではara-Cの持続静注、あるいはN^4-behenoyl-ara-Cによる投与はara-Cの皮下注や2時間点滴静注にくらべ細胞内ara-CTPあるいは血中ara-CのAUCともに高値を持続することが可能であった。このことより、ara-Cの抗腫瘍効果の増強のためには、ara-Cを一定時間投与した後も少量でも持続投与し血漿中濃度を維持することが重要であること、およびその投与量調節のために、細胞内ara-CTPの定量が有用であることがevidenceとして明らかになった。今後、さらに症例を積み重ね、臨床効果や毒性と、AUCなどの薬物動態パラメーターとの比較検討を行う。また、それを容易にするためのpopulation pharmacokineticsの応用による少数のサンプリングでの予測の可能性につき検討する予定である。
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