研究概要 |
急性前骨髄球性白血病(APL)は全トランス型レチノイン酸(ATRA)により安全かつ高率に寛解導入されうるが、比較的早期に耐性が出現し、ATRA投与後再発例のATRA単独での再寛解導入率は約20%と低率である。この耐性メカニズムに関して多くの説があるが詳細は不明であり、耐性機序を明らかにしようとした。細胞はNB4,NB4/ATRA(NB4由来ATRA耐性株:MDR,MRP,LRP陰性)そしてこれらの細胞にMDR遺伝子を導入したNB4/MDRとNB4/ATRA/MDRの4細胞株、他にK562,K562/ADR,NOMO1,NOMO1/ADRの4細胞株とATRA耐性の再発APL5例の芽球。細胞をATRA存在下に培養し、細胞内ATRA濃度とRh_<123>取り込み、PI染色、光顕所見等から検討した。細胞内ATRA濃度はdual laser cytometerを使用し、UV特性より求めた。NB4/ATRA,NB4/ATRA/MDRはそれぞれNB4,NB4/MDRに比較して、細胞内ATRA濃度は高値を呈した。NB4/MDR,NB4/ATRA/MDRはそれぞれNB4,NB4/ATRAに比較して、細胞内ATRA濃度に変化はなかった。PI染色、光顕所見に於いても両者間に相違を認めなかった。再発APL5例由来の芽球において同様の結果が得られた。MDRの発現は細胞内ATRA濃度には影響せず、従来の臨床例を使用した報告とは異なり、ATRA耐性は多剤耐性メカニズムとは独立して成立することが明らかとなった。
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