亜ヒ素酸(As203)がレドックス制御を介して急性前骨髄球性白血病(APL)のアポトーシスを誘導するとの仮説を検証するため、最初に、大腸菌に発現させた白血病特異蛋白(PML-RARα)に対する亜ヒ素酸および還元剤(2-メルカプトエタノール(2-ME))の影響を検証した。1)へ4LおよびPML-RARα蛋白は、非還元下では、oligomerizationをおこすが、亜ヒ素酸具存下では、この現象は濃度依存性に抑制されモノマーとなった。還元下では、亜ヒ素酸添加の有無による影響はみられなかった。一方RARα蛋白は、非還元下でもオリゴマー形成をみなかった。これらの結果はPML側にヒ素感受性に関与する部分があり、亜ヒ素酸により酸化還元状態が変化し、分子内、分子間S-S結合に影響を与えていることを示唆した。 次にAPL細胞株NB4のヒ素感受性に対する種々の酸化剤、還元剤の影響を検証した。過酸化水素、ジアミド(一SH基特異的酸化剤)、グルタチオンの培養液への添加では、亜ヒ素酸にアポ卜ーシス誘導に有意な影響はみられなかった。最近、細胞内グルタチオン濃度の低下が、亜ヒ素酸感受性を増加させるとの報告があり注目されている。そこで種々の薬剤による細胞内グルタチオン濃度の変化と亜ヒ素酸の相互作用について現在検証中である。 さらにAPL細胞株NB4とNB4の亜ヒ素酸低感受性変異株NB4/Asを比較し、亜ヒ素酸PML-RARα蛋白の消失は、アポトーシス感受性とは関係ないこと、また、カスペース経路は、感受性株のみで、活性化されることを見い出した。今後両細胞株のレドックス制御とカスペース活性化の関連を明らかにする予定である。
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