研究概要 |
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の発症には自己免疫学的機序が働いていると考えられている。事実、患者血漿は兎の血小板数を減少させ、PAIgGは殆どの症例で高値を示し、ステロイドなどの免疫抑制剤により多くの症例は血小板数が増加する。約半数のITP患者ではGpIbやGpIIbIIIaに対する抗体が検出されているが、それらは臨床病態との関連性は少なくITPの発症原因となりうるか否か不明であり、Gp以外に対する抗体についての検討は殆どされていない。ITP発症の原因となる特異抗体が同定されていないため、当然のことながら詳細なITP発症機序の解明も進んでいない。我々はITPの原因になる特異抗原の同定を、高感度の遺伝子クローニング法で直接遺伝子レベルで解明する。用いられる方法(SEREX)(Sahin S,Proc.Nath Acad Sci,92:11810-11813,1995)では、他の如何なる血清学的手法でも明らかにし得なかった血清中抗体に対する抗原の検出が可能である。しかも、遺伝子のexpression cloningを用いるために、同時に標的分子の遺伝子を単離し得る。我々は既に巨核球cell lineであるUT-7/TPOよりRNAを抽出してcDNAを作成し、SEREXにてITP患者血清中のIgG抗体に反応する38個のクローンを得た。遺伝子配列の同定からそのうち19個の遺伝子は既知のものであり、9個は未知のものであった。それらのうちITP患者のIgG抗体と最もよく反応するhuman hepatitis delta antigen interacting protein A(dip A)とH.sapiens phosphatidylethanolamine binding proteinに絞って、さらにその蛋白発現ならびに遺伝子解析を勧めている。
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