特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の原因になる特異抗原の同定を、高感度の遺伝子クローニング法であるSerological identification of antigens by recombinant expression cloning(SEREX)を用いて、直接遺伝子レベルでの解明を試みた。巨核球cell lineであるUT-7/TP0よりRNAを抽出してcDNAを作成し、ITP患者血清中のIgG抗体に反応する38個のクローンを得た。遺伝子配列の同定からそのうち19個の遺伝子は既知のものであり、9個は未知のものであった。それらのうち、ITP患者のIgG抗体と最もよく反応するhuman hepatitis delta antigen interacting protein A(dip A)に絞って、以下の検討を行った。 RT-PCR法にて種々のcell lineにおける発現実験を行ったが、全ての細胞においてdip Aは発現された。次に、dip Aを大腸菌に発現させて、正常人ならびにITP患者血清との反応をウエスタンブッロトにて調べた。ITP患者では約60%の患者に抗dip A抗体が陽性であり、正常人では約20%に過ぎなかった。今後、さらにdip Aの変異の可能性ならびに抗dip A抗体の生理的な役割等を解明していく予定である。
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