研究概要 |
1.白血病細胞株BV173は野生型p53遺伝子を有し、放射線照射とcytosine arabinoside(ara-C)処理で、共にBax遺伝子発現は誘導されるが、Fas/APO-1遺伝子はara-C処理ではほとんど誘導されなかった。BaxとFas/APO-1の上流遺伝子であるp53蛋白の性状について等電点電気泳動とSDS-PAGEの2次元で検索したところ、放射線照射とara-C処理ではp53蛋白の等電点は異なり、phosphatase処理で共通の等電点にもどるためp53蛋白の燐酸化に相違があることが示された。p53燐酸化抗体を用いた検討ではserine 15,33,392は燐酸化され放射線照射・ara-C・doxorubicin処理で差異を認めなかった。 2.野生型Baxをもちproapoptotic Bax蛋白を発現している白血病細胞株K562にp53の下流遺伝子であるBax・コントロール・Bcl-2発現ベクターを一過性遺伝子導入しapoptosisを検索すると、Bax遺伝子導入で最もapoptosis細胞が多い。しかし、electroporation自体が細胞障害性を有するためTet-On systemによるBax発現系をK562細胞に安定導入しBax発現を誘導するとapoptosisが誘導され、この反応はpancaspase inhibitor(zVAD-fmk)により阻害されるため、cytochromecを介しないcaspase活性化経路が示唆された。 3.大腸癌細胞株DLD-1にTet-On systemによるBax発現系を安定導入した細胞のBax誘導によるapoptosis機構はcytochromecを介しており、胃癌細胞株KATOIIIのBax発現ベクター安定導入株の抗癌剤に対する感受性増強機構はmitochondriaからのcytochromec放出増強によることが示された。 以上よりp53蛋白は細胞障害性刺激に対して燐酸化を受け、下流で働くBax遺伝子によるapoptosis誘導機構は、cytochromecを介する経路とcytochromecを介さずcaspaseを活性化する経路が存在することが示された。
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