HIVのenvは細胞膜受容体への結合を担うgp120と融合を担う膜貫通糖蛋白(gp41)よりなる。gp41のウイルス外ドメインに存在する二つのアルファヘリックス領域を合成した。以前より融合阻止活性が強いことが知られているDP107とDP178及び近年結晶化された活性化融合殻構造を構成するN36とC34を合成した。これらのペプチド単独とこれらのペプチドの混合物の円偏光二色性質(CD)解析を行った。DP107は208と222nmにピークを有する典型的なα-ヘリックス構造を示した。一方、DP178はランダム構造をしており、この2つのペプチドを生理条件下で混合すると、DP107のα-ヘリックス構造が消失した。次に結晶化に用いられたN36とC34を用いて同様の解析を行ったところ、これら二つのペプチドは単独でランダム構造であったが、複合体は強いα-ヘリックス構造を検出できた。研究者らはN端側に存在するDP107に対する抗体価が感染者の病勢の進行とともに低下することを見い出した。この抗体の低下が活性化融合殻構造(fusion active core)に対する抗体に低下と関連している可能性を検索するために、本構造に対する抗体の特性について検討を加えた。 N36とC34を混合することにより、出現するアルファヘリックス構造は98-6ヒト型モノクーロナル抗体に認識された。またこのことは、感染個体にも存在する機能構造であるとを示している。今後これらの蛋白の立体構造変化を阻止できる抗体が感染阻止に有望であることが示された。
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