ヒト未熟骨髄腫細胞株U266に野生型CD19または対照として細胞質内領域を欠く変異型CD19遺伝子を電気穿孔法により導入し、G418で選択後それらの外来遺伝子を発現する安定形質転換株を数種類樹立した。U266細胞株はIL-6存在下で培養するとCD45陽性(CD45^+) 細胞であるが、IL-6非存在下ではCD45陰性(CD45^-)となる。そして、CD45^+U266はIL-6に反応して増殖するが、CD45^-U266の増殖はIL-6によって変化しない。IL-6非存在下ではCD19抗原を発現するCD45^-U266細胞は、対照または親株と比較してその増殖速度は緩やかであり、他のIL-6非依存性細胞株KMS5で得られた結果と同様であった。しかしながら、IL-6存在下ではCD19抗原の発現は、逆にCD45^+U266細胞の増殖を促進する結果が得られた。このCD45^+U266細胞におけるIL-6の刺激伝達を比較したところ、CD19遺伝子導入細胞でよりSTAT3とERK1/2の活性化が促進される傾向が観察された。同様の事件をCD45^-U266についても行う子定である。これらの結果は、CD19はIL-6と無関係に増殖する細胞では増殖抑制的に働くが、―方IL-6によって増殖が誘導される細胞には増殖に協調的に働く可能性を示唆している。 皮下で腫瘤を形成しないU266をAgarose gelを前処置することによりSCIDマウスの腹腔内に生着させることに成功した。現在10^5 細胞数で可能である。今後、CD19遺伝子導入U266を用いてin vitroで見られたCD19の細胞増殖に及ぼす影響がin vivoでも確認されるか否か検討する予定である。
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