発作性夜間血色素尿症(PNH)は造血幹細胞の後天性変異に起因し白血病を発生することから前白血病状態といわれる。重症複合免疫不全(SCID)マウスへPNHクローンを移植すると異常増殖が観察された。そこで、まずPNHクローンの増殖特性と臨床病態との関連性を知る目的で、PNHを併発しやすいことで知られる再生不良性貧血(AA)や骨髄異形成症候群(MDS)におけるPNHクローンの検出と経時的動態観察を試みた。検出率はそれぞれに30%、10%で、遺伝子異常(PIG-A変異)はPNH症例で報告されている異常と本質的に差はなかった。また異常クローンの増大による発症時期も症例毎に異なり発症の予測因子は見い出せなかった。次に、増殖異常を分子レベルで説明しようと、PNH患者および健常人由来の培養リンパ細胞を調製しmRNA Differential Display法を用い発現遺伝子を比較したところ、PNH細胞にのみ発現する断片2個を得た。1つはcDNAが約700bpで転写因子様モチーフを有し、他にはポリアミン代謝関連酵素の一つとホモロジーが高かった。一方、AA、PNH、MDSなどの関連疾患は程度の差はあれいずれも造血障害を呈し、かつ複数の変異クローンの共存を検出しやすいことから造血障害下での変異好発生を想定してマイクロサテライト不安定性の有無を調べてみたが否定的であり、他の変異誘発機構の検索が求められる。
|