研究課題/領域番号 |
10670960
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
横田 昇平 京都府立医科大学, 医学部, 助手 (80231687)
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研究分担者 |
奥田 司 京都府立医科大学, 医学部, 講師 (30291587)
園田 精昭 京都府立医科大学, 医学部, 助教授 (60206688)
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キーワード | FLT3 / チロシンキナーゼ / 遺伝子変異 / 急性骨髄性白血病 / tandem duplication / MDS |
研究概要 |
FLT3は初期造血の段階においてkitとともに重要な役割を果たす制御因子である。私たちは急性骨髄性白血病(AML)の約20%に膜近傍領域の一部の塩基配列が重複(tandem duplication:TD)することを発見した。本研究の一年目にはこの変異の臨床的な意義、ならびに細胞の増殖にどのような変化をもたらすのかについて検討した。 まず、FLT3/TDがAML患者の予後に及ぼす影響について、JALSGで調査しているのに平行して、小児のAML患者100例についてFLT3/TDと患者の臨床所見、予後との関連を検討した。成人AMLにおいては、5年間のdisease free survival rate(DFSR)は陽性群で19.2%、陰性群で44.3%で、いずれも両群間で有意差があり、FLT3/TDが予後不良因子であることが明らかになった。また小児AMLでは、FLT3/TDは約5%と成人に較べ低頻度であったが、DFSは陰性群で陽性群に比較して明らかに短かった。MDSにおいてはAMLへの進展にともないde novo leukemiaと同頻度に増加することから、染色体異常、N-RAS,TP53遺伝子変異などとともに白血化に重要な役割を果たすとみられ、予後不良因子と考えられている。 次にCos7細胞を用いた異常リセプター蛋白の発現およびリン酸化の解析については、一部名古屋大学医学部直江講師らと共同で研究を進め、FLT3の遺伝子の傍膜貫通部に様々な長さの塩基配列を挿入した変異体を作製し、これをCos7細胞に導入し発現される蛋白を解析している。この結果、挿入されたアミノ酸の配列に拘らず、すべてでリガンドであるFLには非依存的に、FLT3受容体が重合し、そのチロシン残基がリン酸化することが明らかになった。これらの所見からTDは傍膜貫通部を伸長させることで、受容体としてのFLT3の機能を増強するものと考えられた。FLT3/TDのおこるメカニズムについては、遺伝子の一部に回文配列に近い構造があり、これがヘアピン構造を形成してreplication slippageを招来し、TDが生じるものとされ推測されている。
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