研究概要 |
悪性リンパ腫に特異的な免疫グロブリンH鎖(IgH)遺伝子の染色体転座とその相手遺伝子間期核で検出する方法を開発し,120例のB細胞性非ホジキンリンパ腫で診断における有用性を検討した. 【方法】型のごとく蛍光in situ分子雑種(FISH)法を用いた.プローブには人工酵母染色体や人工細菌染色体をおもに用い,Alu PCRによってFISHのプローブに容易に調整できた.これらのクローンでは,ゲノムの100kb〜2Mbの広い領域をカバーできるため,予想された通りの強いFISHシグナルの得られた.IgH遺伝子の染色体再構成はV領域とC領域のゲノムDNAをプローブにする2色FISH法で,スプリットシグナルとして検出した.特異的なIgH転座は,相手遺伝子(C-MYC,BCL1,BCL2,BCL6,PAX5)とIgH遺伝子のプローブ(VHあるいはCγ)の融合シグナルとして2色FISH法で検出した. 【結果と考察】120例のうち55例(46%)でIgH転座を検出し,うち41/55例(75%)で転座相手を同定できた.これは以前報告した成績を確認するものである.転座相手は各々,BCL2 14例,BCL6 13例,BCL1 8例,C-MYC 7例,PAX5 2例であり,日本のリンパ腫の発生も欧米型に類似してきたことが知られる.これらの41例のうち14例(26%)では,間期核を検索することによってはじめて相手遺伝子を検出できており,間期核FISH法の有用性が示された.41例のうち3例では2種類のがん遺伝子がIgH転座に関与しており,C-MYCと各々BCL1,BCL2,BCL6の組み合わせであった.いずれも診断後1年以内に死亡し,極めて予後が悪かった.FISH法を応用すれば,Bリンパ腫の遺伝子診断をベッドサイドに容易に導入できることが今回の研究で示された.
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