High riskの骨髄異形成症候群(High risk MDS)および同症候群から移行した急性非リンパ性白血病(MDS-AML)の難治性についてその理由を明らかにするために、MDS-AMLの女性例に関して、発症時から形態的な骨髄寛解獲得時を経て寛解強化療法終了時まで経過を追って骨髄細胞を吸引採取し、そのbuffy coat細胞についてhuman androgen receptor(HUMARA)遺伝子を利用したクロナリティ解析を行った。HUMARA遺伝子に多型性がありクロナリティ解析が可能で、しかも化学療法により寛解に到達した女性症例は3例であった。対照として、de novoと考えられる急性白血病(リンパ性、非リンパ性両者を含む)4女性例の骨髄buffy coat細胞について、同様に経過を追ってクロナリティ解析を行った。結果は、(1)発症時においてはde novo急性白血病およびMDS-AMLの全例で明らかな単クローン性造血が観察された。(2)de novo急性白血病においては形態的な骨髄寛解導入成功時に全例で単クローン性造血の消失が認められた。(3)MDS-AMLの3症例においては形態的な骨髄寛解導入成功時には全例で明らかな単クローン性造血の残存が観察された。(4)MDS-AML症例において単クローン性造血の消失が観察されたのは、少なくとも寛解強化療法2コース終了後であった。平成10年度終了時点ではいまだMDS-AMLの対象症例数が不十分であるため、まだ結論的なことは言えないが、当初の作業仮説のようにMDS-AML症例においてはde novo急性白血病とは異なり、骨髄寛解導入成功時には腫瘍クローンが強く残存しているために再発の危険性が高い可能性が強く示唆される。
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